実際の地面師とドラマ地面師たちのメンバー比較
地面師とは、他人の土地の所有者に成りすまし、売却を持ち掛け、お金をだまし取る不動産詐欺師のこと。戦後の混乱期に発生、その後、1980年代後半から1990年代初期のバブル期、東京オリンピック開催前の土地が上昇した時期に再度地面師事件が発生。
役割 | ドラマキャスト | 実際の地面師 |
---|---|---|
リーダー | ハリソン山中(豊川悦司) | 内田マイク(立案) |
交渉役 | 辻本拓海(綾野剛) | カミンスカス操(交渉) |
情報屋 | 竹下(北村一輝) | ー |
手配師 | 稲葉麗子(小池栄子) | 秋葉紘子(スカウト) |
法律屋 | 後藤善雄(ピエール瀧) | 弁護士・司法書士 |
ニンベン師 | 長井(染谷将太) | 道具屋(偽造) |
成りすまし役 | 麗子(小池栄子) | 羽毛田正美 |
現金の分配 | ハリソン山中 | 土井淑雄 |
善意の第三者
ドラマキャスト | 実際の人物 | |
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仲介業者 | 林(マキタスポーツ) | 生田剛 |
弁護士・司法書士 | ー | ー |
地面師グループは10人程のメンバーから成る
メンバー | 役割 |
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手配師 | 成りすまし役を人選する |
教育係 | 教育指導 |
成りすまし役 | 不動産所有者本人に成りすます |
前さばき役 | 交渉の場でバレないように立ち回る役 |
客つけ役 | 買主や不動産仲介業者を探す役 |
連絡役 | 偽造品(パスポート等)の授受の媒介役 |
道具屋(印刷屋・工場) | パスポート・免許証などを偽造する |
銀行屋・口座屋 | 振込口座の用意 |
法律屋 | 弁護士・司法書士 |
地面師による事件 積水ハウスと旭化成グループ
2016年~17年に起きた地面師事件で、積水ハウスが55億5千万円の詐欺にあった。
地面師に狙われた土地と地主
土地 | 東京都品川区西五反田2-22-6 |
土地の概要 | 山手線五反田駅近く約600坪の土地 |
建物 | 旅館 海喜館(うみきかん) |
土地の持主 | 海喜館の2代目/1944年生まれ海老澤佐妃子氏 |
旅館 海喜館の経歴
創業 | 戦前 |
経営者 | 創業者は佐妃子氏の父、離婚により母が継ぐ 1975年母死亡、佐妃子氏が継ぐ |
経営状態 | 父、母の時代は羽振りが良かった |
相続人 | 佐妃子氏と異母兄弟の名取兄弟 |
2010年以降、不動産会社等にマンション経営などの話を持ち掛けられる。
- 佐妃子氏は土地、旅館を売るつもりはなかった
営業マン、不動産ブローカーらは客に成りすまし、佐妃子氏に近づいたために、旅館 海喜館は常連客だけを宿泊させるようになり、2015年廃業。
1975年12月23日 | 海老澤佐妃子 不動産相続 |
2010年以降 | 不動産会社に目を付けられる |
2015年 | 廃業 |
2016年11月頃 | 地面師に目を付けられる |
2017年頃 | 佐妃子氏入院・廃墟となる |
2017年 | 積水ハウスが土地を購入する(詐欺) |
旅館 海喜館の土地の価値
旅館 海喜館 地面師の計画 交渉・契約の流れ
- 事件当初 土地の所有者は海老澤佐妃子さん73歳
1.地主の情報を得る
2016年11月
- 地主 佐妃子氏と駐車場の賃貸契約を交わす
これにより、地主の情報を得る
2.地主の成りすまし役を用意する
2017年1月
- 地主 佐妃子氏の成りすまし役を用意
3.偽の書類等の作成
- 印鑑
- 偽パスポート
- 不動産偽造権利証、偽造健康保険証
偽パスポートで、印鑑登録の亡失を届け出、新たに印鑑登録を行い不動産の全部事項証明書、改正原戸籍、住民票、固定資産評価証明書等、不動産取引に必要な書類を取得する。
4.買主候補を探す
2017年3月27日 場所:弁護士事務所
- 買主候補者(株式会社U 他1社)と交渉
交渉の場面でのメンバー
- 佐妃子成りすまし役
- 地面師が佐妃子の財務担当者名乗り売買交渉する
- 常世田吉弘が佐妃子の内縁の夫を名乗る
- 財務担当者と佐妃子は内縁の夫を通して知り合ったと虚偽の話を作る
2017年3月27日
- 転売目的の(株)IKUTAが積水ハウス営業次長へ話を持ち掛ける
2017年4月4日
- (株)IKUTAは積水ハウス営業次長へ契約に関する重要書類を送る
2017年3月30日
- 転売目的の(株)IKUTAが土地購入を申し込む
- 申込証拠金2000万円を地主(地面師)に支払う
転売目的の(株)IKUTA
生田は業界で名の知れた人物であり、積水ハウス営業次長とも面識があった。
- 生田剛が積水ハウス営業次長へ話を持ち掛ける
- 生田剛は転売目的で土地売買契約を交わす
- 生田剛は積水ハウス営業次長へ契約書類、海老澤佐妃子が本人である書類を送る
- 営業次長は書類を事業開発室課長に送付する
- 事業開発室課長は技術次長と情報共有
- 生田剛と営業次長と事業開発室課長と財務担当者で契約条件の打ち合わせ
積水ハウス内部での動き
3月27日 | (株)IKUTAが積水ハウス営業次長へ話を持ち掛ける |
3月30日 | 積水ハウス営業次長は東京マンション事業部事業開発室課長へIKUTAの情報を送る |
4月4日 | 積水ハウス営業次長は(株)IKUTAより契約に関する重要書類を受け取る |
公証役場における本人確認証により海老澤佐妃子が偽物であることを疑わなかった。
打ち合わせでの財務担当者(地面師)より
- 海老澤佐妃子はマンション購入資金3億円がすぐに必要
- 積水ハウス以外で売却先を探す可能性がある
営業次長は、常務執行役員マンション事業本部長三谷和司氏、マンション事業本部不動産部長、東京マンション事業部長、技術次長と打合せを行い、7月末の決済時に所有権移転の本登記を行う方針とした。
IKUTAと積水ハウスと地主(地面師)との取引
2017年4月13日
- (株)IKUTAと営業次長と事業開発室課長と土地の財務担当者(地面師)で契約条件の打ち合わせ
土地の債務担当者は地面師による成りすまし
積水ハウスとの交渉メンバー
- 佐妃子成りすまし役
- 前さばき役
- 財務担当者
積水ハウス内部での動き
2017年4月14日
- 常務執行役員マンション事業本部長らの土地購入について打ち合わせ
- 稟議書作成
稟議書に社長が先にサインしたことにより、社長案件と呼ばれる
2017年4月20日
- (株)IKUTAが積水ハウスに70億で売却する打ち合わせ
土地の売買契約の締結
2017年4月24日
- 売買契約の締結
- 仮登記手続
- 手付金14億円
真の土地の「真の所有者」からの郵便
2017年5月10日 積水ハウスに真の土地の所有者を名乗る者からの郵便が届く
- 佐妃子は長期入院中である
- 売買契約を締結していない
- 偽の印鑑である
- 仮登録抹消を求める
積水ハウスの契約時のメンバーで話し合い、積水ハウスは嫌がらせと判断する
2017年5月19日
- 現地内覧
弁護士の助言で決算日を早める
佐妃子氏には、異母兄弟がおり(離婚した父の2人の息子)、土地の所有権は佐妃子氏にあるが、土地の所有権を主張してくる可能性がある。
前倒し残金支払い
「真の所有者」と名乗る者が現れたことで(佐妃子を偽者と判断しなかった)、弁護士の「他に相続人が居たとしても時効であること」「差押えの可能性があるので前倒すと良い」という助言により、6月1日に前倒し決算。
5月22日 | 弁護士の助言により、決算日を6月1日とする |
6月1日 | 積水ハウスは残金約50億円を支払う |
積水ハウスがIKUTAへ・IKUTAが地面師に支払ったお金
月日 | 支払い | 支払い |
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4/24 | 積水ハウスからIKUTAへ | 手付金現金2億円+預金小切手12億円 |
6/1 | 積水ハウスからIKUTAへ | 8通の小切手(49億819万3309円) |
IKUTAから偽佐妃子へ | 8通のうち6通の小切手を渡す |
佐妃子氏の異母兄弟のが大崎警察署へ
2017年6月1日
- 佐妃子氏の異母兄弟(名取兄弟)が積水ハウスは騙されていると大崎警察署へ
法務局 本登記申請却下
2017年6月6日
- 法務局は本登記申請を却下する
- 国民健康保険被保険証の写しが偽造とのこと
2017年6月6日
- 積水ハウスは取引した佐妃子(地面師)の口座の凍結手続きをする
- 佐妃子(地面師)の口座残金2719円
2017年9月15日
- 積水ハウスは偽造公文書行使、偽造私文書行使、詐欺で刑事告訴
地面師事件の土地のその後
- 2020年 旭化成グループが土地を取得
- 2024年 旭化成グループが30階建の超高層マンション・アトラスタワー五反田完成
積水ハウス 地面師の逮捕とその後
地面師に関わるメンバー「善意の第三者」
善意の第三者
- 善意の第三者は法律用語
- 法律上関わりのある当事者間に存在する特定の事情を知らない第三者のこと
ブローカー、仲介業者、不動産業者、購入者、司法書士、弁護士などが「私も騙された」という。
逮捕された地面師グループメンバーとその役割
2018年、土井淑雄、北田文明容らを逮捕。2019年、フィリピンに逃亡中の小山操(カミンスカス操)逮捕。2020年、内田マイク逮捕。
2018年の年齢 | 地面師の役割 |
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内田マイク(59) | 企画・立案 |
小山操(59) | 交渉役 |
北田文明(59) | 立案・銀行屋・振込口座の用意 |
土井淑雄(63) | 小切手の現金化 |
秋葉紘子(74) | 成りすまし役手配 |
羽毛田正美(63) | 佐妃子の成りすまし役 |
常世田吉弘(67) | 佐妃子の夫役 |
武井美幸(57) | 偽造有印私文書行使 |
生田剛(46) | (株)IKUTA 積水ハウスとの中間業者 |
近藤久美(35) | (株)IKUTA 偽造有印私文書行使 |
小林護(54) | 運転手役 |
佐々木利勝(59) | 銀行屋・振込口座の用意 |
岡本吉弘(42) | 連絡係(偽造品の授受の媒介役) |
永田浩資(54) | 内田マイクの連絡係 |
小林護(54) | リーダー各の手下 |
三木勝博(63) | ー |
有名 地面師 内田マイク・カミンスカス操・土井淑雄・北田文明
地面師 内田マイク
- 事件の立案
名前 | 内田マイク(以前は内田英吾と名もあった) |
生まれ | 1953年生まれ日本人 |
地面師 | バブル時代の池袋グループのボス |
刑 | 懲役12年(求刑懲役15年) |
地面師 カミンスカス操(配役 綾野剛)
- 唯一積水ハウスとの交渉に同席する
名前 | 小山操・外国人ホステスと結婚しカミンスカス操となる |
生まれ | 1959年高知県南国市 |
刑 | フィリピンへ出国逃亡後逮捕・懲役11年(求刑懲役14年) |
地面師 土井淑雄
- 事件の計画を立て、現金を振り分ける
名前 | 土井淑雄 |
生まれ | 1955年 |
刑 | 懲役11年(求刑懲役15年) |
地面師 北田文明
- 事件の立案企画¥口座の準備
名前 | 北田明こと北田文明 |
生まれ | 1959年生まれ長崎出身 |
出身大 | 国士舘大学中退 |
経歴 | 広告業を始め、30歳で不動産業へ(仲買や転売で稼ぐ) |
刑 | 懲役12年 |
その他の地面師メンバー
佐々木利勝(1959年生) | 口座の準備など |
三木勝博(1955年) | 口座の準備など |
武井美幸(1966年生) | 偽造有印私文書行使 |
常世田吉弘(1957年生) | 内縁の夫役・成りすましの演技指導 |
佐藤隆(1957年生) | 地主の運転手役 |
秋葉紘子(1950年生) | スカウト 成りすまし役を探す |
羽毛田正美(1955年生) | 成りすまし役 |
その他の地面師事件
地面師 事件 | 逮捕された地面師 |
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世田谷の5億円詐欺事件 | 北田文明 |
新橋白骨事件 2015年パスポートなど本人確認の証明書、印鑑登録証などを偽造され、土地を収奪 | 内田マイク、秋葉紘子、喜田泰寿、江部勝幸、大塚洋 |
IKUTA (中間業者)
木村隆司から海喜館の話を持ち掛けられる
- 転売目的で偽佐妃子と売買予約契約を交わす
- 法務局で登記簿に仮登記する
- 偽造有印私文書行使などの容疑で逮捕
社長 | 近藤久美 |
オーナー | 生田剛(1972年生) |
本社 | 小林興起元代議士事務所 |
積水ハウスの損害賠償裁判
2021年1月
グループの10人は詐欺などの罪で有罪判決を受け、一部は確定している。
積水ハウスがグループの10人に損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁(鈴木昭洋裁判長)は27日、このうち争わなかった5人に計10億円を支払うよう命じた。
地面師10人が有罪判決を受ける
損害賠償 | 地面師 | 判決 |
---|---|---|
請求内容を認める | 地面師のうち3人 | 5人で10億支払う |
認否を示さなかった | 2人 | 5人で10億支払う |
裁判で争う | 5人 | ー |
積水ハウス 地面師事件の時系列・一覧
年 | 月日 | 契約等 |
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2016 | 11月 | 地面師は海老澤佐妃子と駐車場の賃貸契約を交わす |
2017 | 1月 | 佐妃子の成りすまし役を用意 |
3月 | 買主候補者を探す | |
3/27 | 弁護士事務所で買主候補者と交渉 /株式会社Uや他1社とも交渉 | |
3/27 | IKUTAが積水ハウス営業次長へ話を持ち掛ける | |
3/30 | 営業次長は東京マンション事業部事業開発室課長へIKUTAの情報を送付 | |
4/3 | 転売目的のIKUTAへ/売主(地面師)は申込証拠金2000万円を受け取る | |
4/4 | IKUTAは積水ハウス営業次長へ重要書類を送る | |
4/13 | IKUTAと営業次長と事業開発室課長と財務担当者(地面師)で契約条件の打ち合わせ | |
4/14 | 常務執行役員マンション事業本部長らの打ち合わせ | |
4/14 | 稟議書作成(社長が先に承認したことにより社長案件と呼ばれる) | |
4/20 | IKUTAが積水ハウスに70億で売却する打ち合わせ | |
4/24 | 売買契約の締結・仮登記手続・手付金14億円 | |
5/10 | 【真の所有者からの郵便】積水ハウスに、佐妃子は長期入院中であること、売買契約を締結していないこと、偽の印鑑であること、仮登録抹消を求める内容の郵便が届く ※積水ハウスは嫌がらせと判断 | |
5/10 | 売買契約の締結時のメンバーで話し合い | |
5/19 | 現地内覧 | |
5/22 | 弁護士の助言により決算日を6月1日に変更 | |
6/1 | 残金支払い | |
6/1 | 佐妃子の異母兄弟の名取兄弟が積水ハウスは騙されていると大崎警察署へ | |
6/6 | 法務局 本登記申請を却下(国民健康保険被保険証の写しが偽造) | |
6/6 | 積水ハウスは偽佐妃子の口座凍結を手続き(残金2719円) | |
9/15 | 積水ハウスは偽造公文書行使、偽造私文書行使、詐欺で刑事告訴 | |
2020 | ー | 旭化成グループが土地を取得 |
2024 | 3月 | 旭化成グループ30階建の超高層マンション・アトラスタワー五反田完成 |